ゲノム編集iPS、京大財団が提供 移植拒絶リスク小さく)

日本経済新聞 (2023/06/15

 京都大iPS細胞研究財団は14日、ゲノム編集技術を使って移植時の拒絶反応リスクを小さくした人工多能性幹細胞(iPS細胞)の提供を始めた。対象は医療機関や研究機関、企業など。今後、各機関が治験を実施するなどし、遺伝子を改変したiPS細胞を人に移植しても問題ないかどうかや、移植できる対象をどこまで拡大できるか確認を進める。
 現在はリスクの小さい特殊な免疫型を持つ人から作ったiPS細胞を提供しているが、移植できるのは日本人の約40%にとどまる。財団は「40%以外の人にも選択肢が広がる。どんなニーズにも応えられるようにしたい」としている。
 財団によると、移植したiPS細胞を免疫が異物とみなして攻撃するのを防ぐため、免疫による攻撃の目印となるタンパク質のもととなる遺伝子をゲノム編集技術で複数個壊した。
 約30万個のiPS細胞が入った容器1本で約20万円。非営利機関には無償で提供する。
 再生医療では、iPS細胞を病気やけがで失われた臓器や組織に成長させて患者に移植する。患者自身の細胞から作製すれば拒絶反応を最も抑えられるが、費用が1人当たり数千万円と高額な上、細胞の培養にも時間がかかる。
 財団はこれを将来的に1人当たり100万円までコストダウンすることを目指している。〔共同〕