触って色が分かる靴下登場 片目見えなくなった亡き祖父きっかけに)

毎日新聞 (2023/07/11

 点字と浮き出た文字で色が分かる靴下が今年6月、発売された。はき心地やファッション性にもこだわったという。
 靴下は、「マリモ」(本社・名古屋市)の新企画「みちる」シリーズの初商品。1足1760円(税込み)。靴下の外側に色を示す点字と浮き出たアルファベットが付いている。「ブラック」なら「BLK」だ。ホワイト、ライトグレー、ダークグレー、ネービーもある。色が書かれているのは靴下の外側のため、左右も間違わない。サイズは、レディースが22~24・5センチ(丈約15センチ)とメンズが24・5~27センチ(同約15センチと約24センチ)。地元・愛知県尾州産の綿をたっぷり使い、はき心地もいい。良質な糸により毛玉ができにくく、つま先やかかとも頑丈に作られているという。
 代表取締役の日比野(ひびの)ほのかさん(30)は、子供の頃から祖父が経営するマリモで一緒に働きたいという夢を持っていた。大学卒業と同時に入社。靴下などの衣料品業界は、格安商品の登場や通信販売の普及などで苦境が増していた。「他社と同じことをしていたらだめ」。日比野さんは24歳の時、2代目社長の父親の後を継ぎたいと手を挙げた。2歳年下の妹は、靴下デザイナーとして支えた。
 今回の靴下の開発を思い立ったのは、憧れた祖父がきっかけ。病気で片目が見えなくなり、似た色の靴下を見分けるのに困っている姿を間近に見たからだ。視覚障害者の「靴下の色が分からず、左右を合わせるのも難しい」との声にも背中を押された。
 2021年から開発に着手。視覚障害者とのディスカッションやアンケートを重ね、発売にこぎつけた。独自考案の手法による点字や浮き出し文字は当初、足の裏や甲に付けようと考えた。しかし、視覚障害者の「いろんな人に点字を見てほしい」との思いも受け、外側に決めた。祖父は昨年他界したが、今は「多くの方の役に立てれば」との願いを新商品に託す。
 キャンペーンとして7月末までの注文は送料無料。発送のめどは8月1日。購入はマリモのオンラインサイト(https://shop.marimosocks.com/)または名古屋ライトハウス情報文化センター(052・654・4522、yougu@nagoya-lighthouse.jp)で。